分子整合栄養医学

不妊治療に対するアプローチ

分子整合栄養医学において、原因不明とされる不妊に対してどのようなアプローチをとるのかもう少し詳しくご説明させていただきます。
昨今では、女性の社会進出が進み結婚年齢が遅く、その結果不妊症の診断も遅れるため、生殖医療は加齢との戦いといっても過言ではありません。
前述しましたが、体外受精による妊娠率は、30代前半では30%を上回りますが、40代に入ると著しく悪化し、1桁台まで低下すると報告されています。
不妊検査を受けても器質的な原因が特段見つからないのに妊娠しない、また40代を過ぎると妊孕性が著しく低下するのは、「機能の低下」すなわち「老化」に原因があります。
不妊治療とはある側面から捉えると、40代の体内環境を、可能な限り30代や20代の体内環境に近づけていく治療、臓器レベルおよび細胞レベルでの抗加齢(アンチエイジング)治療ともと言えるかもしれません。
この分子レベルで細胞機能を向上させていくことを目的とした抗加齢治療を得意とするのが、分子整合栄養医学です。

老化とは

ところで、そもそも老化とはどういう現象を言うのでしょうか?
簡単に言えば、「細胞の機能低下」「細胞の数の減少」そして「細胞の酸化」することです。

ひとつひとつの細胞の機能が低下し、また細胞の数が減少すると、その結果、細胞の集合体として形成されている卵巣などの組織の機能も低下します。そしてその機能低下は細胞が「酸化」することでも起こるのです。

「酸化」についてもう少しお話しましょう。
生命維持のためのエネルギー産生を、酸化反応と呼びます。その酸化反応で非生理的な酸化状態が起こり、産生物が蓄積するプロセスが老化の一因です。
加齢によって、脳下垂体、副腎、精巣、卵巣など脂肪の多い臓器に、脂質の酸化反応によって過酸化脂質が増加します。このような過酸化脂質の蓄積物を、老化色素リポフスチンといい、その蓄積が加齢と相関性があることが分かっています。
このような場合、分子整合栄養医学ではビタミンEを処方し、その抗酸化作用によって、このリポフスチンの生成を抑制させます。ビタミンEが、「若返りビタミン」とも呼ばれる所以です。
また、ビタミンE欠乏で、メス実験用ラットは不妊になり、オス実験用ラットは無精子症を引き起こすことが分かっています。
ビタミンE投与で、卵巣重量の増加、排卵の促進、黄体ホルモンの増加、月経周期の正常化も認められています。
さらに、妊娠時のビタミンE補給は、胎盤への血流を促し、胎児への酸素供給増加を助け妊娠維持に必要不可欠なことも分かっています。
このように、ビタミンEの生理作用が、卵子のエイジングや、卵巣機能の向上、そして妊娠維持など生体機能の維持に密接に関係しているのです。

※ビタミンEは、天然、天然型、合成のサプリメントがあり、天然のものにしか抗酸化力や生理活性作用が認められず、専門の医師が詳細な検査と診断のもと処方されたものを摂取してください。

不妊治療に必要な栄養素について

妊娠成立には、もちろんビタミンEだけではなく、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB群、ヘム鉄、亜鉛などの総合的なアプローチが必要です。

例えば、残念ながらその生理作用を正しく理解がされていないため、胎児の催奇性を招くとしてその危険性がやり玉に挙げられて久しいビタミンAは、本来は妊娠成立には臨床面では非常に大きな役割を担っています。
細胞の増殖・分化作用をつかさどるビタミンAは、レチノイン酸(=ビタミンAの代謝産物)が核にレセプターを持ち形態形成をつかさどり、生命現象の根源に深く関与しています。欠乏すると赤ちゃんの成長がうまくおこなわれませんし、胎児の奇形を引き起こすことが理解されています。
また、ビタミンA欠乏では、生殖機能の低下を引き起こします。レチノールは精子や卵子の材料に必須であり、精巣や卵巣にはレチノイド結合タンパクが多いことが分かっています。よりよい卵子を育てるために、ビタミンAは必須です。
細胞内でも、細胞外でも、食物由来の(天然の)ビタミンAは、たん白と結合することで水溶化し、生理活性が調節され、酸化からも保護されています。その厳重なホメオスターシス機構により、一般的に言われている胎児の催奇性などの危険性は考えられません。ただし、市販のビタミンAなどについてはそのほとんどが合成品でありますから、副作用については否定できませんので摂取については注意が必要でしょう。

二分脊椎などの神経管閉鎖障害の予防に、ビタミンB群のひとつである葉酸の摂取が有効なのはみなさん御存じでしょう。
葉酸のみならずビタミンB群は、欠乏するとさまざまな神経障害を生じることが理解されています。ビタミンB群は、脳・神経系で特に需要が高くその機能維持に関与しているからです。そのため、ビタミンB群は胎児の脳の発達にも好ましい影響を与えると報告され、アメリカでは妊婦へのビタミンB群の補給が早くから勧められています。
また、ナイアシンやビタミンB12は葉酸の代謝に必要なように、ビタミンB群は体内で相互に作用しあうので、単体ではなく複合体で摂取する必要があります。

ビタミンCも、妊娠成立や妊娠維持にも大きく関係します。
ビタミンCの大きな役割は、抗酸化力です。アンチエイジングは、「抗酸化」とも呼ばれます。卵子の老化もいわば「酸化」ですから、前述したビタミンEのみならずビタミンCの至適量の摂取が大切になります。
もうひとつ大切なビタミンCの役割ですが、ヒトの体組織のビタミンC濃度を調べると、脳下垂体や副腎、卵巣に多いことが分かります。ビタミンCはホルモン合成に必要な材料なので、これらのホルモン合成がさかんな器官に多く存在します。妊娠成立のための排卵と着床には、ビタミンCは欠かせない材料です。
そして、卵巣はコラーゲンの塊のような臓器ですから、コラーゲンの合成の促進に必要なビタミンCは必須です。卵巣機能の向上に、ビタミンCが一役も二役も買っています。

不妊治療には、ビタミン類だけでなくミネラル類も重要なことが知られています。
一般には、「妊娠ミネラルは、亜鉛」とされますが、「ヘム鉄」の補給は女性不妊にとってはより大切です。
潜在性鉄欠乏性貧血を含むいわゆる貧血は、不妊を引き起こす最大の原因とも言えるでしょう。
貧血かどうかの診断は、一般にはヘモグロビン値を参考にしますが、妊娠成立と妊娠維持ではフェリチン値が非常に大切です。実際に、へモグロビン値は基準値内でもフェリチン値が低いために、生殖補助医療を繰り返しても妊娠に至らないケースが多く見受けられます。
妊娠しない又は着床しない、流産を繰り返す、早産や未熟児の予防には、至適量のヘム鉄の補給でフェリチン値を改善することが、不妊治療のメインストリームと分子整合栄養医学では考えます。