分子整合栄養医学

診断可能な「器質的な不妊」と原因不明の「機能性不妊」

不妊の分類にはいくつかの方法がありますが、産婦人科で行われる基本的な検査で不妊の原因が診断可能か否かにより、原因が明らかな「(器質性)不妊」と、原因が明らかではない「機能性不妊」に分けられます。

診断可能な(器質性)不妊では、薬物療法、手術療法などや、体外受精などの生殖補助医療といった対症療法が確立されています。

それに対して、不妊の原因の半分をも占める、「機能性不妊」については、生殖補助医療が発達した現在でも、現代西洋医学では、対処できない場合が数多くあります。

この「機能性不妊」に対して、分子整合栄養医学が注目されています。


図1を参照いただくと、女性不妊の原因として、卵管通過障害(卵管因子)がおよそ3割、排卵障害(排卵因子)がおよそ1割、そしていわゆる原因の明らかでない「機能性不妊(特変なし)」が実に全体の半分の割合を占めていることが分かります。

矢崎 智子先生

図1 女性の不妊因子別割合(社団情人日本産婦人科医会、不妊症のケア 2001を改変) 女性6,071例
卵管通過障害 31.2%(1,894例)
排卵障害 9.8%(595例)
子宮内腔異常 2.5%(152例)
その他 7.2%(437例)
特変なし(原因不明) 49.3%(2,993例)

この不妊のほとんどを占める、卵管因子(卵管通過障害)と排卵因子(排卵障害)、そして原因不明の機能性不妊についてもう少し詳しくみていきましょう。

卵管通過障害

まず、不妊の原因のおよそ3割を占める卵管通過障害は、「器質性不妊」の代表です。

精子と卵子の通り道である卵管は、排卵→受精→分割→着床といった妊娠のプロセスの、受精と分割が行われる場所であり、妊娠を成立させる上で大きな役割を担っています。

子宮内膜症やクラミジア感染症などによる卵管通過障害やピックアップ障害などによる卵管の閉塞や癒着がある場合は、受精が成立しないため(器質的に、明らかに自然妊娠は難しいため、)体外受精などの生殖補助医療(ART)が必要になります。

排卵障害

次に、不妊のおよそ1割を占める排卵障害は、「卵子が育たない。」あるいは「育っているのに、うまく排出できない。」など、排卵が正常に行われないために引き起こされる不妊を指します。

排卵は、妊娠が成立する過程の第一ステップであり、排卵が正常に行われるためには、さまざまな性ホルモンが関与します。 性ホルモンを分泌する司令塔は、脳の中にあり、視床下部や下垂体という場所と連携して、刺激された卵巣からエストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンを分泌します。どれかの臓器に分泌異常がある場合、排卵障害や着床障害にもつながります。こういった場合、産婦人科で一般的な検査を行なっても不妊原因がわからないと診断されることも多くあります。

排卵障害の代表的な疾患は、下記のようなものがあります。

  • ・高プロラクチン血症
  • ・視床下部性排卵障害
  • ・多嚢胞卵巣症候群(PCOS)

赤ちゃんとお母さん

高プロラクチン血症では下垂体腫瘍が原因の場合があり、その場合は、手術や薬物療法などが必要です。また、胃かいようやうつ病の薬の服用でも起こります。しかし、基本的な検査では原因がわからない場合も多く存在します。

視床下部性排卵障害では、精神的なストレスや、無理なダイエットが原因で「無排卵周期症」や「無月経症」などを引き起こすケースが多く見受けらる、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)は、生活習慣病の罹患率が高く、肥満傾向の患者さまに多く見受けられるなど原因となりそうな傾向は見られるもものの、原因がこれだと判断できる場合は少ないと言えます。

このように、排卵障害を引き起こす原因は、一部の器質的な問題を除けば、原因が判断できず、なんらかの理由によって本来の機能が正常にはたらいていないことから起こっているという場合が多いことがわかります。分子整合栄養医学はこのような場合に原因を生化学的な詳細な検査で把握し、本来の機能を取り戻すことで根本的な病態の改善をする大変有効な治療法になります。

卵管通過障害

全体のおよそ半分を占める特変なし(原因不明)の不妊は、「器質的な原因はない。」ということで基本的な検査では原因がわからないものになります。

しかし、有経であるにもかかわらず妊娠が成立しない場合、なにか不妊の原因があるはずです。その原因は、機能的な原因にあると考えられます。

非常に簡単ではありますが、不妊の原因の多くが機能的な問題と関係することを考慮すると、機能を上げていくための治療、すなわち分子整合栄養医学からのアプローチが妊娠率の向上に大変有効であるといえるでしょう。